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蚕の種類は原産地名で大まかに区分され、現在は日本種・支那(中国)種・欧州種の3系統に分けられている。そして、日本種は日本在来種と朝鮮半島産の蚕を含んでいる。 小石丸。この可愛い小姓のような名前の付いた純白の蚕。小石丸は日本古来の在来種の蚕だといわれている。 最も細繊度の糸を吐き、ケバ立ちが極端に少ない。糸の練り減りが最も少ない、張力が強いなど、数々の優れた特性を持つこの蚕は、あまりにも小粒で繭糸量が少ないため、品質が優れていても経済性に欠けるとの理由で、現在は商業養蚕から姿を消して久しい。 今では日本の伝統を継承している宮内行事として、皇居の紅葉山御養蚕所で代々の皇后様が飼育しておられるのが小石丸であり、その種を山梨県にある農林水産省蚕糸試験場蚕育種部蚕品種保存研究室において原種保存のために養われているほど貴重な品種である。
現在の一般の家蚕は、いろんな品種を掛け合わせ(交雑種)て、病気に強く、粒も大きく、糸も太く、従って繭糸量が多くたくましい蚕に改良されているが、"針金糸"というありがたくない呼称を付けられているのは、この経済偏重の品質軽視を風刺したものである。 戦前、日本の最も重要な輸出品であった絹は、欧米の婦人たちの服飾にはなくてはならない素材であり、日本の絹業界も大いに活況を呈した。そして、国策としていかに絹を量産するかに主眼がおかれ、数々の品種改良によって均一な絹糸を少しでも多く生産できる蚕へと変化させていった。 これ自体、生物学、遺伝学上の大変な功績であったが、その反面失ったものも少なくなかった。絹織物がすぐ擦り切れる、布が重くなった(糸の取引は重量で行なうから重いほど生糸生産者には有利)、着心地の良さを軽視した、つまりすべてが大味になってしまった。 形が良くて粒が揃っていても、水っぽくて本来の味も香りも希薄になってしまった温室の野菜や果物、パサパサして不味いブロイラーのように、蚕は変質してしまった。 絹の手織物の制作に当る私は、どうしてもかつてのあの優れた繭の糸で、作品を織ってみたいという夢を長年抱き続けてきた。 しかし、夢を追い求めることより、私自身の手で小石丸を飼育することを思いたった。私はまさしく地鳥の味を求めて、細繊度蚕品種に挑戦することになった。そのためには先ず何はともあれ、小石丸の蚕種を入手することに全力を投入した。 次のページ≫ 甦った幻の絹「小石丸」養蚕奮戦記 1/6
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